宗像市葉山クリニックの撫中です。かつて「個人情報保護法」が施行され始めたころ、まだ運用に慣れていないひとが多く、その対処に難渋したことを思い出しました。第3者が他人の個人情報を扱う場合、本人の同意が必要だというのがこの法律の大原則です。しかし、こと健康に関する情報になると、第3者が他者のためになるなら、と本人の同意を得ず、情報を扱おうとする場面が多くみられたのです。そして、必ず「その人のためになるから」ということを根拠に、同意を得てない利用がだめだ、ということに納得しなかったのです。決して悪意のある話ではなく、むしろ善意からでたことです。医師は患者のためになるから、といって治療行為を提案し、承諾してもらい、実行することを日夜繰り返しています。病気が治ったり、症状が軽減したり、結果がいい場合、あるいは、副作用がでたり、患者が望む結果に到達できなかったり、と結果が出ないこともあります。「患者のためにならなかった」のです。結果がいい場合でも患者が満足していなければ、やはり、だめです。このように「ひとのためにすること」と本当に「そのひとのためになること」が微妙にずれることがあります。受け手が結果に満足せず、本意でなければ、どんないい結果も「そのひとのためにはならないのです」。そして、これらは、結果をみてから、判断されるので、取返しが尽きません。どこにも悪意がないことが一番辛いことのように感じます。