宗像市葉山クリニックの撫中です。先日、胸部レントゲンを患者に説明していた時に、患者のご婦人から「心臓に毛がはえていませんか?」と問われました。もちろん冗談です。「心臓に毛が生える」とは、厚顔無恥、厚かましいなどの意味で使用されます。でも厚かましいことを表現するのに、「心臓」でしかもなぜ「毛をはやすのか」。毛をはやすのは、なにか一つプラスすることで、増強する意味です。心臓は生命の源を象徴をした部位として選ばれたと言われています。
胴や胸を防護する武具の鎧にしても鉄や練り皮で作った小板を横に重ねて編んだ縅おどし毛で相手を威嚇していたようで、ここでも毛深いことを勇猛であることにつなげています。このように、心臓に毛が生えたとか心臓に毛を生やすといった表現も、毛深い豪族や鎧の毛の示す勇猛果敢さにあやかって生まれ、現代になって物事に動じない心や厚かましい態度といった意味になったものと思われます。先のご婦人は決して「厚かましい」方ではありませんでした。もちろん、心臓に毛が生えてはいません。しかし、「厚かましい」方に同じ質問を受けて時、レントゲン上、心臓に毛が生えている、と読影し、伝えてしまう自分が浮かび、「心臓に毛が生えている」のは自分やな、と気づきました。「口にチャック」です。